今後の外食産業の勝機は、どこにあるのか!

食全体マーケットの中の外食事情

2020年1月15日国内最初の新型コロナ感染者が出てから、約4年。
2023年5月新型コロナ感染症の「5類」への移行による行動制限の緩和から解除へと進み、外食産業は、年間を通して外食需要の回復基調が、継続したことで、2023年の全体売上は、コロナ前2019年度比107.7%となった。これは、4月の入国規制緩和によるインバウンド需要が拡大したことが売上増の一因になっている。ただ、客単価が前年対比107.3%で、上昇していることが大きい要因で「客数」についてはまだ19年の水準まで回復してないと推定されています。
そんな中、外食産業の今後の勝機がどこにあるのか、そのあたりに今回は、触れてみたいと思います。

目次

1.外食産業を取り巻く全体のマーケットについて

外食産業を取り巻く全体のマーケットについて

それでは、まずは、外食産業を取り巻く全体のマーケットを見てみましょう。
まず、上記において、内食・中食・外食とありますが、それぞれの定義の確認をしておきたいと思います。内食(ないしょく・うちしょく)とは、外食の対語で、百貨店や総合スーパー、食品スーパーなどで、材料を購入し、各家庭で素材から調理したものを食べることを言います。

一方、中食(なかしょく)とは、外食と家庭での料理の中間にあり、惣菜や弁当などを買って帰り、家で食べること、あるいはその食品のことを言います。
近年は、単身世帯の増加や女性の雇用者の増加等を反映して、中食・外食における消費がコロナ前までは、増えており、特に中食は、核家族、個食化、家庭での料理の簡単さ、外食ほど経費がかからない事などから、順調に伸びていました。

ところが、コロナ後の2023年度全体のマーケットは、コロナ前に戻ったものの、そこに占めるシェアでは、2019年内食65.8%・中食12.6%・外食21.5%だったものが、2023年度には、内食66.2%・中食13.7%・外食19.9%となりました。つまり、外食は、1.6%減となり、外食市場規模自体も、5610億円減少しました。

2024年度には、外食市場規模自体は、コロナ前より改善予想ではありますが、客単価の上昇が一因になっており、客数については、まだ、コロナ前に戻っていないと推測されています。

2.中食市場における業態別割合

ここで、伸びている、中食市場において、もう少し詳しく見てみます。

中食市場における業態別割合

上記の表から、コロナ後、2023年の各業態別シェアの増減は、2019年と比較して、惣菜専門店が、1.3%減、百貨店0.3%減、総合スーパー0.4%減、食料品スーパー3.1%増、CVS1.1%減と食料品スーパーだけが、増えています。

この理由とは、何なのか?
最近は、どのスーパーも総菜コーナーに力をいれており、目を見張る商品揃えとおいしさの向上によるものだと私は、実感しています。

では、どのようにして、惣菜コーナーのレベルアップにつなげているのか。それは、食料品スーパーのバックヤード厨房における省人化と調理の質のアップがあります。

後でも触れますが、省人化については、スチームコンベクションオーブンの導入による時短調理や自動調理による労働環境改善と調理の質の向上が、大きな要因となっています。
また、調理の質のアップですが、スチームコンベクションオーブン自体の性能の向上で歩留まりがよく、焼きムラの少ない調理が可能になり、大量調理の質を担保できるようになったことです。さらに、企業努力による、メニュー開発や提供パッケージ等の改良等が要因となっています。

さて、話は戻りますが、中食市場においては、コロナ前からコロナ後にかけて、業態別シェアとしては、食料品スーパーが伸びており、一番シェアを落とした、惣菜専門店でも、434憶円と市場規模は、増やしています。

3.外食産業の最近の動向

さて、1.2で、外食産業を取り巻く全体のマーケットについて、ご紹介してきましたが、全体マーケットにおいて、外食産業は、シェア1.6%減、市場規模5610億円減少しています。

また、2024年度以降、市場規模は回復見込みですが、客数はまだ回復していないと言った状況になっています。

そんな中、外食産業は現在、客数アップの試作を打つ必要があると言えるでしょう。そのような状況の中で、最近の外食産業の動向として、私が経営している厨房設計施工会社のお客様の動向について、少し触れてみたいと思います。

当該会社は、外食企業様が、顧客の90%を占める会社で、年間1000社程度の外食企業様の厨房・内装の設計施工に従事している会社です。
その会社のコロナ架におけるお客様の動向を見てみると、コロナで外食市場が、激しく落ち込む中で、テイクアウトに力をいれつつ、コロナ後を見据えて、国策である、事業再生支援事業を活用し、外食・中食(テイクアウト・通販)の調理の生産性向上の為に、セントラルキッチンをつくられていました。

また、宴会需要が激減したことから、大規模から小規模店舗への移行をされました。更に、コロナ架で深夜の需要が見込めなくなり、深夜営業から22時閉店の業態づくりを加速されました。
外食産業の2020年から2024年のこの4年間の動向としては、“今後への準備投資”や“業態開発”を実施されてこられました。

それでは、これからの勝機は、一体どこにあるのか?
それは、一言でいえば“ホスピタリティ(おもてなし)”だと、私は考えています。

4.外食産業の勝機は、ホスピタリティの向上にこそあり!

昨年2024年11月にオープンされた、新橋の「酒のやきとり とりごろ」さんに、既に3度お邪魔しました。そこで、私は、今後勝っていく外食事業を見ましたので、ご紹介したいと思います。

オープン時に伺った時からお店のスタッフさんは、とても明るく、社員のスタッフは勿論、アルバイトさんまで、まだオペレーションに慣れていないにも関わらず、明るいんです。

そして、間違いには素直に、「すみません」と謝りながらも、オドオドすることなく、前向きに明るい接客なんです。
さらに、2度目にお邪魔した時は、厨房内でアクシデントがあった様子にもかかわらず、冷静な対応で、やはり明るい接客でとても満足してお店を出ました。
そして、12月中旬に3度目に伺った時には、もう予約も一杯で、混雑していたにも関わらず、やはり落ち着いた接客でとても居心地が良かったんです。

実は、こちらのお店のオーダーは、席のタブレットからなのですが、タブレットに慣れていない方に、丁寧に教えてくれたり、タブレットを通さないで、スタッフさんが直接オーダーを通してくださったり、臨機応変に対応してくださっていました。

よくタブレット対応のお店で冷たい感じがしたり、ホスピタリティがないと感じたりする事がありますよね。こちらは、タブレットを採用しながらも、臨機応変な対応をすることで、省力化を図りながらも、ホールスタッフとお客様の接点を大事にしている点、つまり、人対人のホスピタリティを必要なところに絞って大事にされていたので、『居心地が良かった』のです。

また、こちらのお店は、都内に12店ほど鶏料理のお店を持たれており、以前は、店で串焼きの串打ちしていたのですが、このコロナ以降に、セントラルキッチンでの串差しに移行され、店舗での厨房の省力化を図っておられました。

まさに、こちらは、厨房とホールの省力化を図りながら、ホスピタリティの向上を実践されており、今後、勝っていく外食の形であると実感致しました。
また、売上も想定売上げを超える成果を上げていらっしゃいました

ここで、申し上げたいのは、これだけ外食が美味しくなった今、外食でお客様が満足を感じる」のは、必要なところでの人対人のコミニケーション、つまり、ホスピタリティ(もてなし)に尽きるということです。

従って、外食産業の勝機は、ホスピタリティの向上にこそあるということです!

但し、ホスピタリティといっても、一方的なものではなく、スタッフがお客様のために想いを込めた行動に、お客様が感銘を受け、喜んでいただいていることが、スタッフに伝わることこそが、ホスピタリティ(おもてなし)であり、外食産業の勝機は、そこにこそあるのです。

そして、その為には、継続的人手不足の時代に対応すべく、デジタル化や、厨房の省力化が必要であり、そこで出来た余力の一部を、ホールでのホスピタリティ向上に役立てることが重要なのです。
また、そこには、ホスピタリティ向上の為のホスピタリティ教育とそれと連動した、人事評価制度も、不可欠になってくるのです。(別途コラム参照)

5.厨房の省人化とホスピタリティ向上の事例

ご紹介店舗:

正 Chinese dining
神奈川県横浜市青葉区榎が丘26-13サンライトピア青葉台1F
電話:045-508-9605 インスタアカウント:masa_chinesedining

深澤・小出シェフ・小出シェフ奥様

*写真左から
筆者・小出シェフ・小出シェフ奥様

こちらのお店では、高級中華料理店から独立された小出シェフご夫婦が、横浜の青葉台に出店される際に、左写真中央のラショナル製のスチームコンベクションオーブンを導入することで、厨房の省力化を図り、シェフがホール担当の奥様をサポートし、ホスピタリティに重きをおかれました。
その結果、奥様の接客が好評なことと、近所で、高級中華をリーズナブルにいただけるということで、昨年8月にオープンしたにも関わらず、早くも人気店となっています。
今後は、商品の外注化についても、ご提案していきたいと考えています。

プロフィール

深澤

深澤 及

創業70年の厨房・内装工事会社の経営者として、モスフードサービスを始めとして数々の外食チェーン企業を成長支援してきた。現在は、キッチンインテグレーターとして、厨房と調理の革新に取り組んでいる。新規出店、リニューアル、人材採用、評価制度構築、集客、FC本部構築など、外食経営についての支援を始めている。三栄コーポレーションリミテッド 代表。

深澤

深澤 及

創業70年の厨房・内装工事会社の経営者として、モスフードサービスを始めとして数々の外食チェーン企業を成長支援してきた。現在は、キッチンインテグレーターとして、厨房と調理の革新に取り組んでいる。新規出店、リニューアル、人材採用、評価制度構築、集客、FC本部構築など、外食経営についての支援を始めている。三栄コーポレーションリミテッド 代表。

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この記事を書いた人

創業70年の厨房・内装工事会社の経営者として、モスフードサービスをはじめとして数々の外食チェーン企業を成長支援してきた。現在はキッチンインテグレーターとして、厨房と調理の革新に取り組んでいる。新規出店、リニューアル、人材採用、評価制度構築、集客、FC本部構築など、外食経営についての支援を始めている。三栄コーポレーションリミテッド 代表。

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